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青山七恵さんのひとり日和を読みました。
70歳代の女性の家に同居することになったフリーターの20歳女性の物語です。
日常の些細な出来事に絡めながら、失恋や自分の意地悪な性格、盗癖のことなどなどをさらっと書いてあり迫力はないものの魅力的な小説でした。
この小説を読んで思い出したことがあります。
大学時代、クラブの先輩が学校の近くに下宿していました。
今では珍しいまかない付きの下宿で
この小説のように先輩は70代くらいの女性の家に間借りして住んでいました。
一度だけ遊びに行ったことがあり、長々と話し込んでしまって夕食の時間になってしまったのであわてて帰ろうとすると、なんと私の分の食事まで用意されていて恐縮しました。
古き良き時代のひとコマでした。
今でも、まかないつき下宿ってあるんでしょうか?
お正月に実家にあった本を借りてきました。
登山家山野井泰史さんの“垂直の記憶”という本です。
山野井泰史さんは無酸素で8000m級の山に登る世界でも有数の登山家です。
2002年秋、ヒマラヤのギャチュンカン北壁の単独登頂に成功されました。しかしその帰路に雪崩に遭い奇跡とも思える生還を果たされましたが重度の凍傷のため両手及び右足の指計10本を失いました。
山野井さんのすごいところは
それからまたなくした指でトレーニングを始められ
2005年にはボタラ北壁完登を果たされました。
http://www.evernew.co.jp/outdoor/yasushi/yasushi1.htm
世の中にはすごい人はいっぱいいますが
この人は本当にすごいの一言です。
他に言葉が見当たりません。
この本は7章で世界の難関と言われる山の登頂記録が記されていますが
第7章ギャチュン・カン北壁の記録はすさまじいです。
夫妻で何回も雪崩に巻き込まれ
悪天候の中、最後はほとんど飲まず食わず
というかもはやからだが何も受け付けず嘔吐しながら
一時は視力まで失いながらも奇跡的に生還されました。
ザックを担ぐ体力も無くなり
最後の日はツエルトもシュラフも無いビバーグ!
二人で胃液を吐いている、と淡々とした筆致
死と隣り合わせと言うか
もうすでにからだの一部が死んでいる状態とも言えます。
生への執着が生還させたのか?
しかし本の中で彼は
自分は山で死んでもよい人間の一人と語っています。
多くの著名な登山家は山で死んでいますが
彼も 覚悟が出来ている と毅然と言い放っています。
カズオ・イシグロの新刊を見つけてしまいました。
船の中で読もうと買ってしまいました。
ほんの少しだけと読み始めたらもう止まりません。この忙しいときに読み始めるべきではなかったのに・・・。
で、
読み終わりました。
カズオ・イシグロは長崎生まれですが5歳のとき父親の仕事の関係でイギリスに渡り 石黒一雄ではなく カズオ・イシグロとして執筆活動をされています。もちろん小説は英語で書かれ私は日本語訳を読んでいます。
ブッカー賞を受賞した“日の名残り”が有名で 私は“日の名残り”と “遠い山なみの光”を前に読みました。
“私を離さないで”を読み終えて
一言で言うと 悲しくて恐ろしい小説。
死ということを改めて考えさせられます。
キャシーという主人公が淡々と語っていきます。
想像上の話なのに非常に生き生きと描かれており
読み進むにつれてどんどん先が読みたくなり、
最後まで止められないのはこの作家の普通でない力量なんでしょう。
土屋政雄さんの翻訳もすばらしいです。
“日の名残り”を読んだときにも感じましたが
日本語というのは本当に美しい言語なんですね。
それを再認識させられる翻訳でした。
原書も読んでみたいです。